平成19年新司法試験の答案を作成してみた。(刑事系第2問)


前回の記事から時間が開きましたね。
あいかわらず、授業、起案、授業、起案の繰り返しです。

期末テストも12科目、計24時間、、、、。
レポートは1科目だけ、、、、(鬱)。


それはともかく、新司法試験の答案を作成してみました。
今回は、実際に答案を作成しました。

その後、なにも手直しすることなく、ワードに書き写しました。


今日は刑事系第2問です。
実際の答案では、158行(7頁と4分の1)くらいの長さになりました。

本番なら、これにあわせて刑法も書くんやよね。
そしたら、あわせて16頁くらい行くのではないか、、、(汗)。
考えただけで右手が痛くなります。

あ、今週の学校の答案練習会を使って、平成19年の刑事系第1問を書くつもりです。
来週くらいにはここにUPできるかな。


では、下に刑事系第2問をUPします。

実際に受験された方、予備校の答案例を検討された方、問題を読んだ方、これから検討する方、

参考にしていただき、遠慮なくコメントをください。


僕の個人的な感想としては、
設問1は、旧司法試験の平成15年第1問を検討しているか否かで、かなり差がつくんじゃないかと思います。
白鳥説を読んでるだけでは、写真撮影は強制処分になって即答案終了してしまいますが。
そんな答案は平成15年では軒並みFG評価と聞いたので、今回もそうだと思います。

設問2は、前科なんで事前準備の問題ですね。
前科と公訴事実の罪名が異なることに着目しました。



よろしくおねがいします。



試験問題は、

http://www.moj.go.jp/SHIKEN/SHINSHIHOU/h19-19jisshi.html

にあります(法務省にリンク

第1 設問1について
1 STUでのビデオ撮影・録画の適法性について
(1)ア 本問では、警察は、令状を取得せずに撮影・録画を行っている。そうすると、本問の捜査方法が強制処分(197条1項ただし書き)にあたるのであれば、令状が必要になる(令状主義・憲法35条法218条1項)。そこで、強制処分と任意処分の区別を検討する。
 思うに、現代では、科学的な捜査方法が発達し、強制力を行使しないでも人権侵害を行うことが可能である。そうすると、処分を受ける側の権利利益の侵害の態様で区別する必要がある。しかし、すべての権利利益の侵害が強制処分に当たるとすると、捜査目的を達成することができない。そこで、「強制の処分」とは、重要な権利侵害をいう。
イ 本問では、STUに出入する駐車場利用者の容ぼうが公権力に撮影・録画されるので、プライバシー権侵害の問題になる(憲法13条)。そして、利用者は何ら犯罪行為を行うものではない以上、理由なく容ぼうを撮影・録画されることはプライバシー権侵害という重要な利益を制限される処分にあたるとも思える。
 しかし、本問では、野外である駐車場において撮影している。そして、人は野外において自分の容ぼうを人に見られることを黙示的に承諾しているのであり、プライバシー権が保護されることへの期待が減少している。そうすると、利用者やその他の者のプライバシー権は、重要な利益としては保護の必要はない。よって、「強制の処分」によらず、撮影できる。
(2)ア もっとも、任意処分といえど、無制限に行われるものではなく、適正手続(憲法31条)の理念の下、限界が存在する。そこで、本問の撮影録画が任意処分の限界を超えて違法ではないか、検討する。
 この点、判例は、写真撮影の場面において、現行犯性がある場合に令状無く撮影することが許されるとした。
 しかし、将来に犯罪が行われることが強く予見されるのに、あらかじめ捜査をしておくことができないとするのでは、真実発見の要請に反する。
 そこで、?現行犯性、または撮影をする強度の必要性があり、?緊急性があり、?手段が相当な場合には、任意捜査の限界を超えず適法であると解する。
イ これを本問について検討する。
?について。本問では、すでに類似の放火事例がPQで発生しており、PQとSTUは隣接する木造住宅に囲まれていること、管理人が常駐しておらず、放火がなされやすいこと、だれでも自由に出入りできることが共通している。そうだとすれば、STUにおいて、PQで放火を行った者が同様に放火をする可能性がかなり高い。
 また、犯人を特定するためには、出入り口において撮影を行い、人の流れをチェックする必要がある。また、PQではC社の車が燃やされているのだから、STUにおいても同様にC社の車が燃やされると考えることが可能である。
 以上のことからすると、新たにSTUでの放火がなされた場合にその犯人を特定し、また、PQの放火の犯人を特定するためには、本件のように駐車場の出入口を特定することが困難である。以上により、?撮影録画をする強度の必要性がある。
 ?について。本問では、建造物等以外放火という社会法益に関する犯罪であり、一度発生すれば、他の車や隣接する住居に燃え広がるなど、多数の生命財産が危険にさらされる。
 また、本問の犯行は深夜に行われているが、必ずしも人通りが多いものではない住宅街であるB町において、ただちに放火が発見され、犯人が目撃されて犯人が逮捕されるということを期待することはできない。そうすると、?ビデオ撮影の緊急性がある。
 ?について。本問の撮影時間は、PQにおいて放火がなされた深夜に限定し、午前零時から5時に限定しており、それ以外の時間における利用者のプライバシー権を侵害しないように配慮している。
 また、撮影する場所について、一台のカメラは公道から見える駐車場入り口に限定し、駐車車両や公道の通行人の容ぼうを撮影していない。そうすると、放火の疑いの無い者がビデオに入ることがないような配慮をしているといえる。もう一台のカメラもC社の車を中心にとらえるにすぎず、広くすべての車を撮影し、他の利用者の容ぼうが撮影されることがないように配慮をしている。もっともC社の車の所有者、隣の車の所有者の容ぼうが写されることは否定できないが、公道に準じる屋外の駐車場であり、これらの者のプライバシー権侵害の程度は低い。
 さらに、ビデオテープの使用方法についても映像を精査した上で必要がないと判断したならば、他の捜査目的に使用することなく、上書きすることにより消去し、プライバシー権の侵害の程度は低い。よって、?相当といえる。
 以上により、STUにおける撮影・録画は適法である。
2 F方における撮影・録画について
(1)本問の処分は強制の処分か任意の処分か。
 本問では、甲方から出てきた又は入る直前の公道における人の容ぼうを撮影するにすぎず、私道での人の容ぼうを撮影したり、プライバシー権の保護の必要性が強い甲方の家の中を撮影したりするものではない。そうすると、公道においてはプライバシー権侵害の期待は弱くなっているのであるから、住人の重要な権利を侵害するとはいえない。よって、任意処分である。
(2)では、任意処分の限界を超えないか、前述の基準で判断する。
 ?について。本問では、警察の捜査により、甲とよく似た者がRの近くの路上で500ミリリットル程度の瓶を持ち、Rの方向から反対方向に走り去っていったことが目撃されていること、甲のバイト先でベンジン入りの瓶(500ミリリットル入り)が数本紛失されている。このことから、甲がベンジンを所持し、Rの駐車場での放火班員であることがある程度推認される。そうすると、Pの放火についてもその類似性から甲である可能性が高い。そして、いまだ甲の容ぼうがはっきりとしていないこと、また、新たに放火がなされた場合に甲のその当時の服装をチェックすることで、甲の犯人性が強く推認できることから、撮影をする郷土の必要性がある。
 ?について。本問では、多数の者の生命財産が危険にさらされる放火事件であり、早く犯人を特定することが要求される。よって、?も該当する。
 ?について。本問では、犯人が放火現場から帰ってくる時間は午前0時から5時までであることが予測される。その他の時間は撮影する必要性が無いので、時間を限定するのは相当なものである。
 また、撮影範囲を通行する者はすべて録画されるが、私的な領域ではなく公道を撮影しており、他の者のプライバシー権の侵害の程度は低い。また、甲宅の中を撮影せず、不要な画像は消去していることから、他の者に対し、プライバシー権を侵害しないように配慮している。
 以上により、?を満たし、本問の撮影・録画は適法である。
第2 設問2について
 被告事件の犯人が甲であることは犯人性を特定することである。これは刑罰権の存否およびその範囲に関する事実にあたり、厳格な証明(317条)によることが必要となる。
 そして、証拠に証拠能力が与えられるためには、?自然的関連性があること、?法律的関連性があること、?証拠禁止にあたらないことが必要である。本問では、特に??を検討する。
(1)?について
 自然的関連性とは、証拠が要証事実に対し、必要最小限の関連性を有することである。
 本問では、前科の事実が証拠となっている。本問の甲の前科は、器物損壊事件であり、本問の放火事件とは罪名が異なるため、必要最小限の関連性はないとも思える。
 しかし、前科事件は、たまたま公共の危険が生じなかっただけあり、仮に公共の危険が生じていたならば、同様に建造物等以外放火罪により処罰されていた事案である。
 そうすると、実質的には同一の罪名といえる。そして、同一の罪名の場合には、前科があるため、公訴事実を行ったという推認は可能である。そうすると、証拠が要証事実に対し、必要最小限の関連性を有する。よって?を満たす。
(2)?について
 法律的関連性とは、その証拠が裁判官の証拠の評価を誤らせないことをいう。
ア では、前科について法律的関連性は肯定されるか。
 思うに、前科を証拠として使用することを許容すると、被告は控訴事実のみならず、前科の事実の有無や、公訴事実との関連性を争う必要が生じる。そうすると被告人に必要以上に防御の範囲を広げることになり、酷である。
 また、裁判所に前科を示すことにより、裁判所は予断を持ちつつ審理に接することになる。これは、不告不理の原則や公平な裁判所(憲法37条1項)の理念に違反する。
 そこで、前科については、原則として法律的関連性が無いのが原則である。
 しかし、前科を証拠として使用する理由が以上のようなものであるから、?証拠として使用する特別な必要性があり、?被告人の防御に特に不利益とならないのであれば、例外的に法律的関連性が肯定されると解する。
イ 本問では、甲は自分は犯人ではないと述べて犯行を否認している。そうすると、甲の犯人性を立証するためには、他の物的証拠によらなければならない。そして、甲の前科はC社い逆恨みして屋根のない駐車場で本件と同様にひっかき傷を作り放火したというものであり、手段が公訴事実とかなり類似している。そうすると、前科を使用することで、公訴事実が甲によるものと強く推認できるので、?が満たされる。また、別の証拠で犯人性を争えばよく、?も肯定。よって、証拠とすることができる。
以上